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令和7年度事業計画【概要】

生活目標 「光の子になろう」

1.運営目標

(1)総 論

 光の子として生きよう。互いに親切にし、思いやりを持って、心からゆるし合う人になって、神様に愛されている子どもとして、良いこと、悪いことを見分け、感謝を忘れず、平和をつくる人になろう。

[エフェソの信徒への手紙 第5章より]

 

テ ー マ 

 当園で暮らす子どもたちの課題や問題などは、入所するまでの間の養育者による不適切な養育環境によるものであり、子ども自身が身に付けてしまった結果であることを理解することが大切です。このような子どもたちを受容する中で、子どもが示す態度や行為を否定せず、誤りを教えていくことは大変なことです。まずは全てを受容することがスタートであり原点となります。

受容された経験のない子どもたちは、人を求めることや甘えることができません。受け入れられる体験を涵養していくことで、信頼関係を修復し信頼できる人を求め、受け入れられるような人間関係の回復を目指していきます。

子どもたちの生活場面で「互いに思いやる生活」を送るためには、ホーム生活において大人自身が子どもを受容していくことが大切であり、その生活をともにしている子どもたちがその姿勢や態度を見て、感じながら生活をしていることを専門職として自覚し職務に当たります。

(2)目 標

① 入所児童との信頼関係の再構築と権利擁護

② 養育基盤、職員のチームワークの再確認

③ 職員の専門性の向上

 

2.支援目標

 令和7年度は、小学生7名、中学生7名、高校生4名の計18名でスタートします。そして、入所児童の約83%が身体的、心理的、性的虐待およびネグレクトを理由に、また、県中児相より約50%、中央児相より約28%、会津児相より約11%、浜児相より約6%、県外の児相より約6%の子どもが措置されています。また、発達障害や情緒不安等を理由に精神科等を受診している子どもは約50%で、その多くが日常的な服薬治療を必要としており、入所児童の約33%の子どもが特別支援学級・学校に在籍しています。子ども個々が抱える課題は様々で一括りに捉えることはできませんが、園で生活する子どもの現状を理解する上で参考にしていきたいです。

  • 子どもとの信頼関係の構築

  • ソーシャルスキルに関する支援

 

3.ホーム生活

(1)さくらホーム

 今年度は「小さな“できた”を積み重ねる」ことを目標とします。成長するに連れて「できたこと」が増える反面、どうしても「できないこと」に目が向きがちであり、子ども間の指摘や注意が多くなりやすいです。個々の課題については継続して支援していくと共に子どもと共有し、自ら意識して取り組むことができるようにしていきます。日々の振り返りをする機会の一つとして、定期的なホーム会を実施し、自分ができたことを周囲に認められることで自己肯定感や課題改善への意欲が高まり、相手を褒めることで自然と思いやりの気持ちを育めるようにしていきたいです。また、今年度は受験を控えている子どもや卒園予定の子どもがいるため、進路実現に向けて成績や金銭面などの状況をこまめに確認し、自覚と意識をもって生活ができるように支援していきます。

(2)くるみホーム

 今年度は、「自分の課題や目標を明確にし、その達成に向けて生活する」ことをホームの生活目標とし、課題に向き合いながら自己成長を促す支援をいきます。課題解決のために一緒に考え、取り組む姿勢を大切にし、成功体験を重ねることで子どもたちが自分に自信を持つことができるようになることを目指します。

(3)高野ホーム(グループホーム)

 ホーム全体の目標としては「自立に向けた生活技術を身につける」「人とのコミュニケーションを通して社会性を身につける」の2つを子どもたちに周知し働きかけていきます。自立に向けた生活技術については、小学生も5年生以上と高学年になるため、分担された仕事に責任をもって取り組み、洗濯や食器洗いなど自分のことを少しずつ自分で行えるよう働きかけていきます。中学生、高校生においても洗濯や食器洗いを継続し、自発的に動けるよう働きかけていきます。人とのコミュニケーションについては、挨拶などの基本的なことから、他者とのやり取りにおいて言葉遣いや口調、態度に気をつけること、相手の話に耳を傾けること、自身の発言や行動を相手がどのように受け取るかを教えていきます。

また、個々の月目標を子どもたちに提示し、意識づけを図り、個別の振り返りを通して子どもが自身の課題に向き合えるよう働きかけます。職員は年齢や個々の特性にも配慮した目標設定と工夫をした支援を考え、子どもたちがモチベーションを保てるよう、できたことを認め、褒める関わりを心がけていきます。

 

4.食生活

 食べることは、子どもの心身の成長発達に欠かせないものの一つです。生活の中で食事は人間の満足感、安心感に非常に大きな影響を及ぼします。子どもにとって安らぎの場、精神的な充実感を味わう団欒の場として大切です。また食べることが、質や量的に満たされていれば、子どもが安心しているというものではなく、それに加えて子どもの嗜好や季節に合わせ、手作りの料理や盛り付けの工夫など、見た目にも潤いのある温かい雰囲気作りが大切です。本来、食事は家庭生活の一部として、子どもが育つ上で欠くことのできないものです。

 ホーム毎に職員が料理を作り、少人数の落ち着いた雰囲気の中で、子どもが楽しく食事ができるよう配慮していきます。

 また、子どもが家事手伝いをすることにより、調理技術や物の取り扱い方、経済観念を身につけるようにします。特に年長児においては、卒園後の自立した生活で即必要とされるものであることでは、ホーム職員のもとで一緒に料理をしていきます。

 こうした毎日の積み重ねにより、子どもの情緒の安定を図り、生活意欲を向上させ、心身の健全な成長発達のもとに、安定した生活を創りだそうと考えています。しかし、ホーム単位で食生活を営むことが、単に方法として存在するだけでは意味をなさず、それを十分に機能させるためには職員自身の技量や配慮が必要不可欠です。職員が食生活に対して常に関心を持ち、その重要性や基本的なあり方を正しく共通に理解しながら取り組む姿勢が大切です。定期的に振り返りの機会をもち、職員自身の意識の向上や統一を図っていきます。

 

5.衣生活

 衣服は様々な機能を果たします。主に、体温調節や防寒のためなど身体の保護目的の意味を持ち、個人が自己の好みのものを着用する中で、自己の主張をしたり、独自性を示す1つの手段としても用いられます。私たちが子どもたちに衣服を提供する際には、このような衣服が持つ意味を十分に理解し、適切に提供していかなくてはならないのです。

 衣生活の豊かさは、子どもの精神的な満足感につながり、生活の安定に繋がっていくと考えています。私たち職員は常に清潔で子ども一人ひとりの成長に合わせた衣類を季節に応じて提供していかなくてはなりません。また、その過程において、職員が子ども一人ひとりに思いをこめながら細心の配慮をすることは、子どもたちにとって何よりの喜びと充実感を感じるときです。

 近年の子どもたちの服装は多様化してきています。その中で子どもの好みや個性を大切にしながら衣服を提供していくこと、また、子どもが自分に合った適切な衣服の選び方ができること、衣服を大切に洗濯や補修の方法を学ぶことなど、自立に向けた指導にも取り組んでいきます。そのためにも、職員が同じ視点に立った服装の統一を目指し、子どもたちに同じ支援ができるよう話し合う機会を設けていきます。そして、子どもたちのニーズに合わせた衣生活を提供できるよう努めていきます。

 

6.学習・進路指導

 愛生園で生活している子どもの多くは、入所以前の生活において学習が習慣化されておらず、十分な学力が身についていません。そのため、学年相応の学力に至らず、学校の授業について行くことが難しい子どもも多く、また、集中力や学習意欲に欠けている子どもも多く、子ども自身が将来に向けての希望や展望をもちにくい状況が見られます。

 そのことを踏まえ、学習指導については、学校教育の延長ではなく、一人ひとりの能力に合わせた基礎学力を身につけることに重点を置きます。子ども自身が学習意欲を持つことができるよう配慮し、将来へ展望をもち、学習を積み重ねていくことによって、達成感や自信をもち、学習の習慣化を図ることができるよう指導していきます。

7.心理療法

導入の目的と経緯、計画

 虐待等によるトラウマのために心理的問題を抱えて、対人関係が困難になる子どもが増加しています。児童養護施設には、これらの子どもに安全な安心できる生活環境を保障し、適切な対人関係を形成する力を育むために、統合的な援助を提供することが求められています。厚生労働省の施策として、平成11年度より「心理療法実施指定施設」の認可制度が発足し、認可条件に適合する施設に心理療法担当職員(以下、心理担当職員とする)が非常勤で配置されることとなりました。平成18年度からは心理療法が必要であると児童相談所長が認めた子どもが10名以上在籍する施設に、心理担当職員が常勤で配置されることとなりました。平成24年にはそれまでの通知が整理され、心理担当職員の配置が原則義務化されることとなりました。

 愛生園が精神科医や心理担当職員と関わる必要性を強く感じたのは、昭和40年に「てんかん発作」の子どもの治療のために通院したことがきっかけでした。子どもの処遇効果が上がらないことに困惑し、精神科医と相談したのが始まりでした。以来、精神科医や病院の心理職員と連携しながら職員の研修を行い、自己資金によって非常勤心理担当職員を採用してきました。

 令和7年度も心理担当職員が不在となります。人材確保に努めつつ、心理治療を必要とする子どもに対しては、児童相談所心理担当職員の協力を得ながら、できるかぎり心理面接や知能検査等を実施します。また、定期的に精神科へ通院している子どもについては、主治医と連携を図りながら、心理面接や知能検査等の実施を検討していきます。

 

8.情操教育

 堀川愛生園の運営理念は、キリスト教を基盤としています。親や周囲から受け入れられず、自己否定の強い子どもにとって、生命の尊さを知り、生きていく希望や支えをもつことは、社会へ自立していくときに生活を営む力となっていくと考えられます。また、近年、様々な宗教が私たちの周りに存在し社会的に増加していることから、自立を踏まえた宗教のあり方を学んでいく必要があります。

 これらのことを踏まえ、キリスト教に触れながら、子どもと職員が共に、生き方や考え方について学ぶことが情操教育の目的としています。

9.危機管理

 近年、子どもたちを取り巻く環境はますます深刻な状況であり、子どもたちの安心、安全を守ることが私たち大人の責任です。愛生園にいる子ども、職員の安心、安全をどのように守っていくかが重要な課題でもあります。

 愛生園では、「事故防止対応マニュアル」を作成し、子どもと職員の安全確保と事故防止を図っています。当マニュアルには、様々な問題発生時の連絡体制や自然災害への対応、緊急時の非常食の保管状況、関係機関への連絡手順などが示されています。

 施設内の事故を未然に防止するため、園内の「危険箇所マップ」を掲示し子ども、職員に周知徹底し、子どもたちが使う公園の遊具等の定期的な点検を行っていきます。

10.職員研修

 職員の研修は、職員の質的向上を図る上でとても重要なものです。近年、施設に入所してくる子どもたちの多くは、虐待を受けたことにより、心身に大きな傷を負い、非行や不登校、情緒障害など問題が複雑、多様化してきています。このような子どもたちが示す言動に対して、どのように専門性を持って対応していくか、施設職員の専門職としての資質が問われているところです。言い換えるならば、自分をよく知り、どのように自己変革できるか、どのように施設職員としての質的向上、処遇能力の向上を図るかということです。職員一人ひとりが自覚を持ってより良い養育を行うためにも、研修は大変重要です。研修に対して職員が積極的に取り組むことが必要であり、職員会議、園内研修、園外研修、自己研修について考え、取り組んでいきます。

 

11.ファミリーソーシャルワーク

(1)家庭調整​

 入所してくる子どもの多くは、親や家庭との繋がりがあり、その関係をどのように調整していくかが重要です。また、この関係性は、子どもたちの日常生活や処遇効果にも大きく影響しています。家庭調整は、親や家庭と連絡を取り合い、定期的な面会や一時帰省を行って、親子を含めた家族全員がお互いに受け入れられるように働きかけていくことが基本であります。

 子どもたちは、入所以前の生活状況がどのようなものであったとしても、常に親や家庭のことを気にかけながら園での生活を送っています。職員は、家族関係の修復、再統合に向けて積極的に働きかける必要があり、また、子どもに対しても、親や家族に対して現実認識できるように促していくことが重要です。しかし一方では、親や家族が自分自身や子どもについて理解していない、理解しようとしないケースも多いです。例えば、園では安心して生活している子どもであっても、親、家族との面会や一時帰省の際の親や家族の言動によって、不安定になってしまうことがあります。それほど子どもにとっては、親や家族の存在が大きく、また、子どもへの理解や園の処遇に対する理解が必要です。近年は、複雑かつ多様な問題を抱えたケース、児童福祉法第28条(家庭裁判所の審判によって施設入所が決定する)ケースが増加しています。このような観点からも、児童相談所などの関係機関と綿密に連携を図っていくことが、さらに重要となります。また、1年以内に家庭復帰をする子どもに対しては、退所後の生活について関係機関と連携し、親や家族に対する指導、調整などをしながら、家庭調整をしていくことが必要です。

(2)アフターケア

 施設における養育は、子どもが退所した段階で終わるものではなく、就職や進学した後も継続していく必要があります。職員が一人ひとりの子どもに対して、どれほど適切に処遇してきたかが、自立後に問われます。子どもの家庭背景が以前より大きく変わり、近年は親や家族がいるケースが多く、施設のアフターケアの在り方が難しくなっています。アフターケアの方法は、電話、メール、帰園した際に仕事、生活、経済などの話を聞きながら、必要に応じて職場や寮、アパートなどの訪問、支援機関などの関係機関との連携を図り、助言、指導をすることです。

 最近の傾向として、短い期間で離職するケースが増えています。原因として、対人技術の未熟さ、経験不足、耐性力の欠如などが考えられます。施設は、多くの不安を抱えて自立した子どもたちに、適切なケアを行っていく責任があります。愛生園では、就職した会社に長期間勤めることが望ましいと考える反面、離職や転職自体を否定せず、社会のルールに沿って退職や転職をしていけるスキルを教えていく必要があると考えています。自立した子どもとの連絡は、園の電話やメールアドレス、住所を用いることを基本としています。

(3)里親との連携

 児童福祉法の改正により、「家庭養育第一主義」が新たに規定されました(第3条の2)。子どもが養子縁組や里親、ファミリーホームといった「家庭における養育環境と同様の養育環境」において継続的に養育することを指しています。このため、里親の普及から里親支援までの一貫した取り組みが児童養護施設等に求められています。また、施設においても「家庭養護」を実践する里親等からの助言、指導等を受け、資質の向上に努めています。社会的養護を必要とする子どもたちにとって、養育者同士の交流、支援を図ることを目的としたいと考えています。

(4)地域支援

 近年の児童虐待に関する相談件数や重大な児童虐待事件の発生状況は年々増加の一途をたどり、深刻な社会問題となっています。このような状況を踏まえ、関係機関と子ども等に関する情報共有や考え方を共有し、適切な連携の下で支援・対応することが重要であり、要保護児童等の早期発見や適切な保護を図るために設置された「棚倉町要保護児童対策地域協議会」に参画します。

 また、子どもを養育している保護者が疾病や仕事、その他の事由により、家庭における養育が一時的に困難となった場合等に、園において短期間の養育および保護することを目的に、「棚倉町子育て短期支援事業」を締結しています。

4.法人事業(項目のみ)

1. 理事会・評議員会の開催

2. 地域における公益的な取組

3. 広報活動

4. ボランティアの育成、活用

5. アメリカ・カリフォルニア大学デービス校インターン生プログラム(JCHIP)

6.施設内環境整備等事業

Copyright © 2019 Horikawa Aiseien

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